見上げると広場の端に並んでいる街路樹の、

その中でも一際背の高い樹が、そのしなやかな枝を引っ込めているところだった。


うそ。樹が一人で動いているの?


あたしを釣り上げて、その枝の中に包んで守ってくれたのはこの子だったの?


信じられない光景にしばし頭がぼうっとしたけど。


あ!特殊能力者!?

霞がかかった頭に、かろうじて白い光が差し込む。


特殊能力を持った誰かが、この子を動かして助けてくれたんだ。


−−さっきの男の子?


あわててぐるぐる周りながら視線を動かす。


広場での鎮圧はほぼ終了したみたいで、警察も暴徒もその姿はまばらだった。


やじ馬だと思われる人の固まりが、ビルの脇にへばりついている。