「だから、戻らなくてもいいって」
さっきよりも強い口調で言った須藤くん。
なんで、わたしがキレられてんの?
普通、キレたいのはわたしの方だからね?
ムカついたから彼のことは無視して仕方なく教室に戻ろうとしたら、それは須藤くんによって阻まれた。
須藤くんがわたしの腕をぐっ、と掴んでいる。
なに……?
なにも言わずに振り返り、無言でギッ、と彼の綺麗な顔を睨みつける。
離してよ…。
わたしはどうせどこに行ったって優等生扱いなんだから。
本当のわたしなんか誰も知らない。
知ろうともしないんだ。
わたしが何を…どんなことをしたいのかも。
「ハハッ…!無言で睨むとか恐ろしいなお前」
そんなことをいって、豪快に笑っているところを見ると、本当に恐ろしいと思っているとは全く思えないんだけど。
でも、須藤くんがキラキラな笑顔を見せたとき不覚にもドキリ、としてしまった自分がいた。
誰かに笑いかけられたのなんて何年ぶりだろう。
その眩しい笑顔に思わず、見とれて吸い込まれてしまいそうになる。



