人が少ない…と思っていたのは最初だけで次々と駅に止まる度に少しずつ人が増えていき、


二駅ほど電車に揺られただけで小さな箱の中は人で埋もれ、ぎゅうぎゅうと押されて痛い。


これが世でいう“満員電車”なのだろう。
足が地面についているか分からない、まるで体が浮いているんじゃないのかな?と思うほど。


あと何駅乗るんだろう……酸素が薄いのか息が詰まりそうで苦しくて辛くなってきた。



「ひゃあ…!」



ガタン!と電車が大きく揺れてその衝撃で体が扉の方へとよろけて“ぶつかる!”と思ったら柔らかいものに包まれた。


え……、視界は暗闇で何が起っているのか分からなくて戸惑う。
わたしの耳に届くのは彼の心臓が足早に奏でる音だけ。