【純恋side】




時が流れるのは風のように早くてあっという間に約束の土曜日が来てしまった。


あの日、要くんは怒ってなかったようで次の日も普通に話しかけてきてくれた。
だから、少しだけこの前よりも安心した気持ちでいられる。


「ちょっと出かけてくる。夜ご飯はいらない」


「どこに行くの?」


「気分転換に夜ご飯を食べに行くの」



要くんとさよならをしてもわたしは今日はすぐに家には帰らず、カフェで時間を潰そうかな、と考えている。



「そう、帰り道に気をつけてなさいよ」



どうにかごまかせたようでホッと胸をなでおろす。


待ち合わせの九時に間に合うように家を出た。
九時なんて早い時間だなぁ…と思って要くんに『どこに行くの?』と聞くと『それは着いてからのお楽しみ』と言われた。



デート、なんて言っていいのかわからないけど服装とか気にしちゃって、白いワンピースに丈が長めの黒いコートに身を包んで、フワフワと手触りのいいファーのついたショートブーツを履いてみた。


頭にはグレーのベレー帽を被り、少しでもオシャレに見えるように頑張った。