【須藤 要】
そう表示されている。
わたしは夢でも見ているんじゃないかと疑った。
間違いかもしれないと思ってなかなか出ることができずにいたけど、着信は一向に鳴り止まない。
間違いじゃ…ない?
そんな期待を寄せて、対応のボタンを押す。
すると、
『やっと、出た』
耳の鼓膜に心地いい低く男らしい声が届く。
電話だからなのか、いつもよりも低く感じる。
要くんの声を聞くと、感情を我慢することが出来なくなってコントロールが効かない。
「っ…うぅ……っ」
ずっと、我慢していた涙が頬を伝う。
ポタポタとわたしの雨はカーペットに落ち、目立つシミをつけていく。
『純恋…?どうした?何があったんだ?』
突然泣き出したわたしに困惑を隠せない様子の要くん。
そりゃあ、いきなり泣き出したりなんかしたら誰だって驚くよね。
「ごめんね……っ」
『謝らなくていいから、何があったんだ?泣いてるんだろ?』
「何でもな…『みえみえな嘘つくな。俺には言えよ、何でも。お前の全部を俺は知りたいと思ってる』
「要、くん……っ」
『お前が辛いなら俺が慰めるし、俺がお前の支えになるから』
電話越しでも分かるぐらい、はっきりと力強く言った要くんにわたしの涙腺は崩壊した。



