「父さん…っ!」



隣に座っていたお兄ちゃんが「それは言っちゃいけないだろ…!」と言いたいのを堪えているのか身だけ前に乗り出した。



「才能がないやつにしか夢は叶わん」


「夢なんて見ても無駄なだけよ 」



わたしは…もう何も言えなかった。


ただ、わたしの夢への道には“両親”という大きすぎる壁が立ちはだかっていて


わたしは今それを壊せずに黙って夢というものに憧れ、羨み、どうすることも出来ないまま、その壁を見上げていることしかできないただの弱虫。


わたしに夢を見る資格なんて最初からなかったんだ。
この家に生まれた以上、その資格は頭のいいお兄ちゃんにしかないのだ。



「っ……分かった。
変な事言ってごめんなさい、もう忘れて」



心臓が鷲掴みされているような感覚で…呼吸も上手くできなくなるほどただ胸が痛く辛くて……。


わたしは机の上に無残に散らばっている憎い紙たちをかき集め、手に持つとその場から足早に立ち去った。