【完】幸せは透明度100%





そのとき、膝の上に置いていたスマホがブルルッと震えた。


パッ、と反射的に下を向いて画面を見て鼻の奥がツンとすると同時に乾いていた瞳が一瞬にして潤み、それを隠すようにわたしは目を服の袖でグリグリと擦った。


冷静になってもう一度親の目を盗んで画面を見る。



【新着メッセージ】“今日の夕飯はラーメン”


【新着メッセージ】“須藤要が写真を送信しました”


【新着メッセージ】“それより、頑張れよ”



さっき、わたしがメッセージを送ったのは要くん。
そして、『今日の夜ご飯は何だった?』ってどうでもいいような事を尋ねたんだ。


わざわざ、写真付きで送ってきてくれるなんて案外要くんってマメなんだね。


でもね、一番心にグッときたのはやっぱり…


“頑張れよ”


その言葉なんだよ。
君が頑張れって言ってくれるだけで不思議なくらい力が湧いてくる。


どうしてなんだろうね?
今なら、言える。



「これからはもっと勉強を…「…わ、わたし、デザイナーになりたいの」



長い長いお説教が始まる前にずっと心の中で温めていた言葉を口にした。


緊張で、まだ心臓がドッドッドッと早く脈打っていて、しばらくは平常心に戻れそうにはない。