【完】幸せは透明度100%





「うん……」



あのこと…言わなきゃいけないのに、喉の奥が何かにせき止められているように言葉が出てこない。


どうせ……わたしに自由なんて…


『もう自分で自分の価値を下げるな。』


ふっ、と頭の中に浮かび上がってきた要くんの言葉。
そうだよ、自分の価値は下げちゃダメ。
自分の価値を下げようとするから惨めな思いをするんだ。


わたしはわたし。
ほかの誰でもない、越智純恋はわたしだけなんだ。


俯いていた頭を上げておかずに手を伸ばす。
家族の会話に耳は傾けず、ただひたすら口だけを動かした。


わたしの家はエリート集団だから話す内容もニュースでやっている政治の話だったり、正直興味もない面白くもない話。


だから、わたしは何も言わない。
三人であーだこうだと言い合っている。



「ごちそうさま」



手を合わせて、食器を持ってキッチンへと持っていきシンクに置くとゴンッと音を立てた。