わたしは今日、夢への一歩を自分の足で踏み出すの。
『言いたいことはいう』そう彼が教えてくれたから。
「……」
無言でお兄ちゃんの隣の椅子に腰を下ろす。
わたしが来てもさっきの楽しそうな空間は変わらなくて…よっぽどいい事があったんだな、って思った。
「おかえり、純恋」
「……ただいま、お兄ちゃん」
わたしが椅子に腰を下ろしてすぐに最後の一匹であろうエビフライをわざわざあたしのお皿に置いてくれたのは今年で22歳になる兄の泰知(たいち)
運動神経抜群で秀才、容姿も完璧。
全てを兼ね揃えたわたしのお兄ちゃん。
お兄ちゃんは嫌いじゃない。
こんなわたしにも優しくしてくれるから。
お説教が終われば、いつもわたしのところに来て「気にすることないよ」って言ってくれる。
そう言われるたびに嬉しいはずなのに“できないのに頑張らなくていい”そう言われているような気もして複雑な気持ちになるのだ。
でも、わたしは知っている。
お兄ちゃんは誰よりも努力していることを。
わたしの代わりに両親の期待に応えるべく一生懸命勉強して今の大学に入れた。
いつかだったかお兄ちゃん聞いたことがある。



