「ほら、早く座りなさい。冷めちゃうでしょ?」


「あ、うん」


お母さんに急かされてカバンを置いてダイニングテーブルの椅子に気分が乗らないままゆっくりと腰を下ろす。


わたしが帰ってくる前にご飯だということを知らされたのか二階からお兄ちゃんがドタバタとゆっくりと降りてくる足音が聞こえてくる。


お母さんは楽しそうに料理を並べている。


それにテーブルに並べられている今日のご飯はいつもよりもずっと豪華な気がするし、お父さんもやけに帰りが早い。


豪華な料理やお父さんの帰りが早いこと、お母さんの機嫌がいいことの理由なんて聞かなくても分かった。


分かりたくないのに分かってしまうのが嫌。