「なんで来たんだ…?早く授業に…「要くんが心配だったからに決まってるじゃん!」
わたしは興奮のあまり少し大きな声を上げてしまった。
そんなわたしを見て大きく目を見開いている彼はもたれていたフェンスからゆっくりと体を離した。
「あと…ありがとうって言いに来た」
わたしのためなのかは定かではないけれど
彼はわたしの代わりに反撃してくれた。
殴ることは正しい反撃の仕方ではないのは重々承知だけど、きっと要くんは不器用なところがあって……言葉よりも行動の方が人に伝わるときだってあるとわたしは思う。
「礼なんて言われることしてねぇよ…むしろ、謝んなきゃ。悪かった。
あとでちゃんとアイツにも謝っとく」
やっぱり、あれは何か理由があったんだね。
正気をなくしていたように見えたのも気のせいじゃないんだ。
だって、君はとっても優しい人だから。
“優しさ”が何なのかは言葉では説明できやしないけどなんか……この人なら大丈夫って自然と思えてるの。
いきなりキスなんかされて警戒してたのに今はそんなありがちじゃない出会いすら、嬉しく思ってしまう。
「うん。でも、わたしは要くんは間違ってなかったと思うよ。」
一歩一歩、彼に近づいて後ろで手を組んでさりげなく隣に立ってそう言ったら、要くんは何も言わずに黙ってわたしを見つめていた。
今の要くんはこの前、デートしたときのような雰囲気ではなくて、もっとダークな雰囲気を醸し出していた。



