「さっきの言葉撤回しろ…。
それまで俺はお前を許さない」
「要くんっ…!」
慌てて引き留めようとしたけれど要くんの意識はもうこっちに向いていなくてただ彼だけに向いているようだった。
周りの生徒は要くんや彼には何も言わず、お得意のヒソヒソ話で今この現状について話している様子だった。
「何なんだよ…お前。どうしちゃったわけ?
この時代じゃ、『死ね』なんて冗談でもよく使うだろ?」
悪びれる様子もなく、呆れたように言いながら立ち上がる彼を要くんは許さずぐっ、と胸ぐらを掴んだ。
彼の着ているワイシャツはたくさんのシワがよっていて、それを掴んでいる要くんの手には見ただけでも分かるほどギュッと力が込められていた。
「二度と使うな…っ」
そう言った要くんの表情は見ていられないほど悲しげに歪んでいて、胸がぎゅうっと縄で縛られているかのように締め付けられて苦しかった。
「わ、分かったよ、分かったからその手離してくれよ。」
余程、要くんが怖かったのか顔をひきつらせながら彼は言った。
周りのみんなも普段とはまるで違うそんな要くんの様子に気づき、
コソコソ話でガヤガヤとうるさかった教室はシンッと一気に静寂に包まれ、耳に届くのは要くんの声と彼の声だけだった。



