将来の夢……
そんなの考えたことなかった。
だって、わたしは親の言いなりで将来は弁護士にならなきゃいけないと思ってたから。
「ないの?」
優しくわたしの心に響く彼の声に今まで心の奥底にしまっていた気持ちがフツフツと湧いてくるような、そんな気持ちになった。
「……あったとしても叶えられないよ」
人は小さな頃にいろんな夢を持つ。
教師、消防士、警察官、看護師、パティシエ…どの夢を持つかは人様々だ。
でも、いつしかそんなキラキラした夢は人々の心の中から消えていってしまう。
ちゃんとその夢を叶える人もいるけど、叶えられない人だって山ほどいる。
「叶えられないから夢なんだよ」
ぼそりと呟いたその一言を要くんは聞き逃さなかった。
すると、要くんはスケッチブックをアスファルトの上にそっと置いて口を開いた。



