「何でもないよ」



ぎこちなく笑ってみせるけどさすがに無理あるかな?
胸をドキドキさせながら要くんの顔色を伺う。



「俺に隠し事なんか出来ると思ってんの?」



呆れたような、不満そうなそんな表情をしてわたしの背中に隠されたスケッチブックをひょいっと抜き取った。



「あ!ちょっと…!」



慌てて取り返そうとして手を伸ばすも、もう既に手遅れで彼はしっかりとスケッチブックを開いていてマジマジと中の絵を見ていた。



み、見られた……。

誰にも見せたことのない、あたしの秘密のスケッチブック。



「ふーん、絵とか好きなの?」



「か、返して…っ!」



必死に手を伸ばすけど、彼と背丈がまるで違うわたしはどんなに頑張って奪い返せない。


そんなわたしの様子を見て、ふっ、と一度笑みを見せると「はい、どうぞ」と案外あっさりと返してもらえた。



「だ、誰にも言わないでよね……?」



こんな下手な絵を見られたくない。


そして、密かに興味があったこともあたしなんか興味があるとみんなに知られたらどうなるかなんて分かりきってる。