「なんか言えよ…」
「え…っ、わ、わたしも…!
要くんといると本当に楽しい!」
ずっと、真っ白だった世界が次々と広がり、色づいていくような、そんな気持ちになる。
この人といれば、きっとわたしは変われる、どこにも根拠がないのに何故かそんなことを強く思った。
「ふっ…いい子いい子」
優しく目を細め、またわたしの頭をまるで割れ物に触れるかのようにそっと撫でる。
要くんの手はゴツゴツしていて男らしい大きな手。
そんなことを意識してしまうわたしはどうかしていて、心臓が大きく反応する。
「か、からかわないで…っ!」
これ以上、かき乱されるとまずいから割と大きい声で言い放った。
こんなところで優しさを知ってしまえば…わたしはどうしたらいいのか、分からなくなる。
友達だっていないのに……。
「別にからかってねぇし」
「か、帰る…!!」
気づけば、要くんを置いて走り出していて後ろから聞こえる要くんの声も聞こえないフリをして家まで走った。



