季節は11月上旬。



いつもなら手はキンキンに冷たくて息を吹きかけて温めているはずなのに今はものすごくあったかい。



それも全部、この手を握ってくれている須藤くんのおかげだ。




「…あの」




でも、わたしなんかが繋いでいい手じゃない。

きっと、もっと可愛い女の子が繋ぐべきの手なのだ。



「今、離されたら俺拗ねるからね」



どうやら、わたしの言おうとしていた言葉を彼は分かっていたようだ。
やっぱり、わたしの心の中が見えていたりするのかな?


そんなこと思いながら須藤くんの言葉をもう一度頭の中でリピートする。
拗ねられるなんて…それはそれで困る。



だって、須藤くん拗ねたら面倒くさそうだし。


てか、人間誰でも拗ねたら面倒だしね。

ここは須藤くんの行動に甘えて大人しく繋いでおこうか……



「げ、ゲームセンターに行くんですか?」



わたしは本当に離そうと思っていたなんて察されたくなくてとっさに口から言葉を出した。

実は、わたしはゲームセンターなんて生まれてから一度も行ったことがない。



なぜなら『そんなところはお金の無駄よ』と、昔から両親にしつこく言われていたから。