「ねぇ…要くんはどこ?
トイレかな?それとも…」
それでも信じたくないわたしは坂田くんの言葉に期待を寄せながら、尋ねる。
「要は……もういないよ」
そう言った坂田くんの瞳からは一粒の雨が病室の冷たい床に向かってこぼれ落ちた。
わたしの期待は簡単にあっさりと裏切られた
……最初からそんな気はしていた。
だって、この前まではたくさん置いてあった私物が一つもなくて、綺麗に片付けられた誰もいない病室を見れば誰だって予想はできてしまう。
「そんな冗談はやめて…」
「昨日、容態が急変して…さ、
そのまま帰らぬ人になったんだ…っ」
坂田くんの口からポツポツ、と出てくるその言葉たちはどれも信じがたいものだった。
だって…この前はちょっとやつれてたけど元気そうだったよ?
なのに、なんで…なんで…っ。
せきが切れたように溢れ出した涙がポロポロ、とこぼれ落ち、それを隠すように両手で顔を覆う。
要くんが死んだなんて…そんなっ…信じられない。