『須藤要さんの体は心臓病に侵されています』


時が、今まで当たり前に同じスピードで流れていた時がこのときだけは止まったような、そんな気になった。


悪いことを言われる予想はできていた。
ついさっきまでドラマでよくあるやつだな〜なんて呑気なことを思っていた。


でも、実際にそれを言われてみると戸惑いや信じたくない気持ちがふつふつと芽生え始める。


『そ、そんな…っ!』


何も言葉を発せず、ただこの状況をいまいち理解しきれていない俺の隣で姉ちゃんが叫んだ。
姉ちゃんの声は震えていて、涙を流してはいないものの口を抑えて動揺を隠しきれていない様子。


それから図や資料などを使ってその病気について医者が丁寧にわかりやすく教えてくれたけど、俺の頭にはその言葉の一つも入ってこなかった。


だって、どれも信じたくないことばかりで。
嘘だろ?とか夢の中にいるんだよな?って思ってたから。



『お姉さんと要さんにはまだ言わなくてはいけないことがあります』



ただ、嫌なことだけははっきりと覚えている。
きっと、一生忘れられないそのセリフを。


今さっき、嫌なことを知らされたばかりなのにまだあるなんて…と深刻な表情の医者の瞳と視線を合わせ、耳を傾けた。