今更、気づいても…もう遅いのに。
あの時既に長く生きられないことを知っていた彼は…わたしと同じ気持ちになることや夢を追うことすら出来なかったんだ。
それなのにわたしは……っ。
もし、もう一度あの日に戻れるのなら思い切り二人で抱きしめ合ってお互いの傷や悲しみを分け合うのに。
そんなことを思っても時は戻らない。
ただ、この後悔に呑まれることしかわたしにはできない。
それからどのくらい時間が経ったのか分からない。
どうやって、家に帰ってきたのかも定かじゃない。
ただ、帰っている途中にポトッポトッと雨が降ってきて、それはしばらくするとボトッボトッと大粒のゲリラ豪雨に変わり、わたしは空を見上げながらその雨に濡れていたのは覚えている。
だって、その雨が……要くんの涙のように思えて仕方なかったから。
こんなのただの思い込みだけど、それでも…要くんが泣いているのなら、放ってなんておけない。
本当はわたしが…助けてあげたかった。
でも結局彼を救うことができなかった。
だから、せめて…と思い、雨にわざと濡れた。
わたしの心の中にポッカリと大きな穴ができて抜け殻のような状態になってしまいそうな気分だった。



