「…ありがとう、純恋…本当に。」
最後に彼も泣きながら笑い、そっとわたしから離れて、「じゃあな…」と言いながら、フラフラとした危ない足取りで立ち上がると腕で涙を拭いながら去っていこうとした。
わたしもその場に立ち上がり、彼に向かってずっと言いたかった感謝の気持ちを述べた。
「要くん…ありがとう…本当にありがとうっ…またね…!」
すると、彼は一瞬足を止めたけど何も言わずそのまま行ってしまった。
わたしはその後ろ姿を黙って見つめていることしかできなかった。
ただ、わたしの涙でぼんやりとした視界の先に映る彼はとても小さく見えた。
「…っ、好きなのに…
またね…なんてバカだなぁわたしも…」
ぽつりと呟いたわたしの想いは静かすぎる病院の廊下に消えていった。
またいつか君に会えると信じてたいんだよ。
だから、『またね』と言って手を振ったんだ。
『俺も純恋と同じ気持ちを経験できたら…よかったのに』
いつか、君が言っていた言葉がふと頭の中に浮かんできた。
あのときは余裕もなくて聞き流してしまったけれど、あの言葉は要くんの虚しさや悲しみが詰まった言葉だったんだ…。



