【完】幸せは透明度100%




いつか、一度わたしに「死ねば?」と言ったクラスメイトの加藤くんを要くんが思い切り殴ったのを不意に思い出した。



あの行動はお父さんとお母さんを早くに亡くして、つい殴ってしまったのかと思っていたけど


本当は長く生きることの出来ない、わたしたちのクラスの中で誰よりも“死”に一番近い彼なりの熱い想いが込められていたんだ。


そんなことにも気づけなかったわたしって本当にバカだ。


要くんが苦しんでいるときにそばに居てあげられなかった。



「お前と出会ったから…っ、死ぬことが惜しくなって…っ。怖い…ほん、とはずっと怖かった…死ぬことが…っ」



それは初めてわたしに見せた彼の弱い部分。


ずっと彼が心の奥底で隠し続けてきた本音と弱音。


それを聞いたら、どうしようもなく君を抱きしめたくなって立ち上がりそっと扉を開けて目を抑えて涙を流している要くんをそっと包み込むように抱きしめた。



ここは人通りの少ない廊下だから患者さんも看護師さんも滅多にこない。



だから…しばらくはこのままでいたい。
君の悲しみや恐怖を少しでも和らげてあげたくて。