【純恋side】
それからあっという間に放課後になり、
結局、“デートのお誘い”を断ることができなくて仕方なくついてきてしまった。
わたしみたいなのが、須藤くんのような男前な人の隣を歩くなんて……いいのかな?
なんか、ソワソワするよ。
こんなこと慣れてないからだろうけど。
「純恋…って呼んでもいい?」
隣から遠慮がちに聞こえてきたのは、柔らかくて心地のいい須藤くんの声。
よ、呼び捨て……と思ったけど、
ほんのりと赤い彼の頬を見ると“嫌だ”なんて言えなくて、
コクンッと一度頷いてみせると、パァっと花が咲いたかのような笑顔をわたしに向けた。
「じゃあ、俺のことも『要』って呼んで」
ええ!?呼び捨て!?
未だかつてわたしは人の名前を呼び捨てで呼んだことがないから難易度の高い話だ。
フルフル、と首を左右に大きく振る。
呼び捨てでなんて恐れ多すぎて呼べないよ。