「高校に入ってすぐにその病気になってさ、学校休んで薬とか飲んで治る日を夢みて辛い治療にも耐えてた。けど、いっこうに良くならなくてさ。」
思い出すように一つ一つ言葉を繋げている要くんの声は震えていて…ぎゅうっと胸が締め付けられた。
要くんが高校に入って学校に来なくなったのは、
女の子と遊んでたからじゃなくて病気と必死に闘ってたからなんだね…っ。
「で…言われた。手術しないとあと二ヶ月だって。
でも、手術しても生きて目覚める確率はそう高くなくて俺は手術することを諦めた。
最初から生きてる価値もないようなヤツだったから。」
要くんの言葉、一つ一つが心にジワリと染み込んでくる。
要くんは生きてる価値もないような人じゃない、誰よりも優しくて思いやりのある人だもの。
それはわたしが保証できるから。
「それでよかったはずだった。好きなように生きて死ぬ、残り短い人生を悔いなく終われたはずだったのに…っ」
きっと、彼の瞳からもわたしと同じような大粒の雨が床にポタポタとこぼれ落ちているのだろう。
一人で彼は苦しんでいた。
わたしの苦しみなんかよりももっと大きくて闇の深い苦しみを。
それなのに、彼はいつも笑ってた。
太陽のようにキラキラと眩しいほどの笑顔を見せていた。
だから、気づかなかった。君が苦しんでいることに。
いまさら、遅いってわかってるのに…どうしようもなく辛くて苦しい。



