「俺は…お前に隠してたことがある」
────…ドサッ
すぐ後ろから音が聞こえ、それは要くんがわたしと同じように扉に背を向け扉に寄りかかっているのだと思った。
「俺は……あと数週間なんだ」
ぽつり、と向こう側から聞こえてきた言葉に一瞬、心臓が止まったような感覚に陥った。
ウソだ……要くんがあと数週間だなんて…ウソに決まってる。
また、いつも面白くない冗談でしょ?
ねえ……早くウソだって言ってよ…っ。
せきが切れたように涙が溢れ出てきてわたしの頬を何度も伝っていく。
「うっ…うぅ…」
わたしの嗚咽が誰もいない病室に静かに響き、虚しくなるほど広い病室に呑まれて消えていく。
「俺…心臓病なんだ。
ははっ…急にこんなこと言われてもわかんねぇってな…ごめん」
要くんの短く呆れたような悲しいようなそんな笑い声が聞こえてきて余計に胸が苦しくなった。
きっと君は今、無理して笑っているんでしょ?
彼の口から出たのはテレビなどでは聞いたことのある病気。
でもどんな症状がでるのか、どんなにリスクのある病気なのかもさっぱりわからない。
わたしは泣いて、何も言えずにいると要くんはそれをわかっているらしく、何も言わずに話を進めた。



