消えるわけない。
君がわたしの中から消えることなんてもうありえないよ。
だって、君と過ごした時間がこんなにも輝いて心の中でもずっと大切に残ってあるんだから。
わたしにとって、君はいつまでも特別なんだよ。
どんな君だってわたしは好きなんだから。
「純恋ちゃんに会いたくないのか?
ほんとにそれでいいのか?」
坂田くんの穏やかだけど震えた声に要くんはなんて答えるのだろう。
耳をすませて、彼の返答を待つ。
「俺だって…会いてぇよ。
叶うならずっと側で見守ってたい。
……忘れなきゃなんねぇのに頭からアイツの笑顔が、泣いてる顔がこびりついて離れてくれねぇんだよ」
「……っ」
たまらなく、君が愛おしい。
今、口を開けば『好き』がこぼれ落ちてしまいそうだ。
君の優しい嘘は、私の胸を悲しくなるほど締め付けるのにこれでもかというほど温かくもする。
まるで、何かの魔法のようだ。
止まらない涙を制服からはみ出たカーディガンの裾で拭い、その場から立ち去ろうとしたら、コトンッ、と音がして視線をそちらに向けるとポケットに入っていたスマホが床に落ちた。
それと同時にガラッと音がして顔を上げるとそこには要くんが立っていた。
さっきの音は彼が病室の扉を開ける音だったんだ。



