『俺とお前は遊びだったろ?
俺、お前みたいな陰気くせぇやつ嫌いだし』



あの日の君がついた嘘はとっても優しい嘘だった。
全て、わたしを想っての言葉だった。


なのに、わたしはなんであの場で追いかけて問いたださなかったのだろう。


自分だけ傷ついたような気になって…本当に一番辛かったのは自分自身も傷つけ、周りの人たちをも傷つけた彼だったのに。


どうしてそれにもっと早く気づけなかったのだろう。



「アイツは…今まで辛い思いをしてきて我慢もいっぱいしてきた。

だからこそ、幸せになって欲しい。
これからは辛い思いも我慢もしてほしくないんだよ。
せっかく、手に入れた幸せも自由も俺のために失ってほしくない…」



「でも、それは純恋ちゃんを傷つけてるの同じじゃないのか?」



「俺のことを最低だと思って忘れりゃいんだよ…!!」



静寂に包まれていた病室に響いたのは要くんの怒りの混じりた声。

そんな声も消毒の匂いがする真っ白な病室へと消えていってしまう。



「そう…俺のことなんか…アイツの記憶の中から…消えればいいんだ…っ」



さっきの荒らげた声とは裏腹な弱々しい声音でそう言った彼の声はかすかに震えていた。