「今からいうことは誰にも言うな。
それは本人からの願いだから…お前だけ特別だ」



その言葉にコクンと一度だけ頷く。


ドクンドクンと鼓動が意味もなく早くなり、脈拍も上がってきているような気がする。



「…須藤は今病院にいる」


「え?」



今、先生はなんて言ったの?
思わず、自分の耳を疑った。


確かに『須藤は今病院にいる』そう聞こえたけど、その言葉をどうしても信じたくなくて。



「須藤の体は病に蝕まれている。
だから、学校に来ないんじゃなくて来れないんだ」


「そんな……嘘っ……」



あんなにも元気よく笑っていた彼が病気なんて…そんなの嘘に決まっている。


嫌だ…信じたくない。
黙り込んでしまったわたしに先生はそっと柔らかい口調で言った。



「嘘だと思うなら、この病院に行ってみろ。
そこに須藤はいるから…辛いとは思うけどこれが現実なんだよ」



わたしの前に差し出された一枚の白い紙。
そこには“〇〇病院”と書かれていてそれを見ているだけでさっきの話が現実味を増していく。


真実を…自分の目で確かめに行かなきゃ。



「ありがとうございます。
明日、彼に会いに行ってきます」



頭を下げてお礼の言葉を述べてわたしは会議室をあとにした。


泣くまいと目をカーディガンで抑えながら空気が冷たくてしんみりとした寂しい廊下を足早に歩いて家まで帰った。