「はぁ?なんだよそれ。
せっかくお前が学校に来たから…」


「迷惑だし、疲れるんだよ。
お前らみたいなバカとつるんでると頭使うから。」



感情のない、無機質な声が教室にやけに大きく響く。


いつもの要くんとはまるで違うことは明白だった。
だからこそ、みんな戸惑いの表情を浮かべているんだ。


まだ来たばかりだというのにカバンも持たずにどこかへ行こうとしてしまう彼を追いかけようとすれば、一人のクラスメイトに止められた。



「もう放っておけよ、あんなやつ。
受験のストレスなのかは知らねぇけど、
俺らに八つ当たりすんなっつーの」



愚痴をこぼし始めた男の子に掴まれている腕をそっと振り払うと、不思議そうにこちらに視線を向けた。



「…違うよ。要くんは…そんなんじゃない…!」



きっと、何かあったんだ。
また一人で抱えようとしているなら、わたしが君の味方になってあげたい。


わたしは教室を飛び出して校舎内を走って要くんを探した。
心当たりはある…きっとわたしたちが出会った場所に彼はいるはず。


その扉を開ければ彼は空に手を伸ばして今にも壊れてしまいそうなほど切なげな表情で青く透き通る空を見上げていた。


度々吹く風が彼のはちみつ色の髪の毛を小さく揺らす。



「要くん…久しぶりだね」



わたしは彼に少しずつ歩み寄る。
そんなわたしに気づいた彼は視線を空からこちらへと向ける。