「やっぱり、知らないんだね」
「……知らないよ。ただ、知りたいとは思う」
坂田くんの真剣な瞳をしっかりと見つめてそう言えば彼は一瞬驚いたような表情を見せてからすぐに元の表情に戻した。
「分かった。俺から聞いたって内緒だよ」
「うん…」
とりあえず、立ちっぱもなんだからと言って坂田くんはわたしを椅子へと座らせて、わたしの前の椅子に自分の腰を下ろした。
「アイツ、めちゃくちゃ耳に穴あいてるだろ?」
どこか悲しげな表情で話し出した坂田くんの横顔をわたしはじっと見つめた。
そして、彼の話にそっと耳を傾けた。
「あれはアイツの心の傷を癒すためのものなんだ」
「…え?」
心の傷を癒すためもの?
あのたくさんのピアスの穴が?
わたしには理解出来なかった。
どうして、あんなにたくさん開ける必要があるのか…。
でも、坂田くんの次の言葉で全ての謎は一瞬にして解けて、胸がぎゅっと締め付けられて息をするのさえ苦しくなるほどだった。
「どうしようもない心の痛みを少しでも
和らげたくて、痛みの矛先を耳に向けたんだ」
だから、彼の耳にはたくさんのピアスの穴があけられているんだ。
両親を亡くしてわたしなんかには到底わかるはずのないくらいとても辛い思いをしたのだろう。
苦しんでいるんだ…今も。
軟骨にも数箇所あけられた穴は本当に見ているだけでも痛そうだった。
でも、そんな痛みなんかよりもずっと消えない心の痛みの方が大きかったんだろうな。



