おでこをスリスリと摩っていると、目の前から彼の手が伸びてきてぎゅっと目を瞑っていると上から優しい穏やかな声が降ってきた。



「純恋、髪の毛食べちゃってるよ」



恐る恐る目を瞼を上げると彼がわたしの口に入りかけていた髪の毛を取ってくれた。

髪の毛には神経が通っていないはずなのに甘く痺れてしまいそうな感覚に襲われる。

そして、要くんに触れられたところがジンジンと熱を帯びていき、やがてそれは全身に移ってゆく。


「あ、ありがと…っ!」


「どういたしまして。
あ、お礼に俺の頭撫でてよ」


「え…!?なんで!?」



あ、頭を撫でるって…こんな街中で!?
確かに人通りは少ないけどさ…恥ずかしいよ。


「ダメ?純恋に撫でてもらったらパワーもらえる気がするんだよな」


まるで、子犬のような甘えた瞳で見つめていう君はズルいし、頭の中で計画を立てているのだろうか。


そんな目で見られたら断ることなんてできなくて、少し背伸びをして君の頭に手を持っていき、そっと優しくいつも君が撫でてくれるように思いを込めて撫でる。


私が手を動かす度にふわりと揺れるはちみつ色の髪の毛。
そして、視界に入るのは彼が心底嬉しそうに少々照れくさそうに微笑んでいる姿。


そんな姿にまたわたしの心臓は早鐘を打ち始める。
鎮まれ…鎮まるんだ…こんなにドキドキしていたら要くんに聴こえてしまいそうだ。



「ありがと。おかげで明日も生きれそうだ」


「ま、またそんな大袈裟な…」


「ほんとほんと。てことで本当に帰ろっか」



君の言葉にコクンと一度頷けば、歩幅を合わせて歩いてくれる要くん。
ふたりきりの時間の幸せを噛み締めながらわたしは一歩一歩大切に歩いて家まで帰った。