「俺が虜にしたいのは一人だけなんだけどな」
「え?」
「まあ、誰のことなのかは教えないけど」
恥ずかしそうに頬を赤らめて言う君はとても愛おしそうな表情で、きっとその子のことを思い浮かべているんだろうということは安易に分かった。
そんな顔でわたしを見ないで。
ヤキモチを妬いてしまうから……やめて。
要くんにそこまで想われているその女の子が羨ましくて仕方ないよ。
わたしみたいなちんちくりんは恋愛対象外なんだろうなぁ……
「教えてよ!」
「んー、ダメ。
それより純恋さっきから手が止まってんぞ」
「もう……いいもん。聞かなかったことにする」
「そんな拗ねんなよ。可愛い顔が台無しだぞ」
クスリと笑い、わたしの頭を優しく撫でる。
この感覚がとても好きだ。
優しく、まるで割れ物に触るように撫でてくれるから心がとても安心する。
要くんの一番がわたしじゃなくてもどうせ要くんを好きな気持ちは変えられないんだからもういいや。
好きなら好きでとことん想っていよう。
だって、この先君以上の人になんて出会える気がしないから。



