「純恋…あなたには特に厳しくしすぎてしまったわね。
純恋を見ていると、どうしても昔の自分と重ねてしまうの…あなたにはわたしと同じような思いをして欲しくなくて。ごめんなさい。
でも、あなたは私の知らない間にこんなにも強くなっていたのね、きっと例の彼のおかげなんでしょうね」
「……っ」
何も言えなかった。
ただ、大量の涙のせいで滲んだ視線の先でお母さんが優しくわたしに微笑んでくれているような気がする。
ああ、わたしたち家族はずっと本音を言うことが出来ずに偽りの気持ちで過ごしているうちに知らぬ間にすれ違ってしまっていたんだ。
それぞれ、本当に大切に思っているのにそれを上手く伝えることができなくて。
「純恋、これからたくさん辛いこともあると思うけどデザイナーになるために頑張りなさい。
そして、いつかお母さんのために洋服をでデザインしてね」
瞳から溢れ出す涙を人差し指で拭いながら言うお母さんにわたしは何も言わずに抱きついた。
どれも上手に言葉に出来なかったんだ。
無性に抱きつきたくなって…これまで二人の間にあった溝を埋めるかのようにわたしとお母さんの距離は近くなった。



