「俺も…人の役に立つ医者になりたい。
期待されるのは嬉しい…

でも、その分プレッシャーが襲ってきて…それを吐ける場所が見当たらなくて正直今は苦しい…」



初めて聞いたお兄ちゃんの本音につい涙が零れそうになるのを必死に唇を噛み締めて堪える。


わたしたちの間にしばらく沈黙が流れ、そのあとに口を開いたのはお父さんだった。



「父さんも……お前たちのことを
ちゃんと見ていたつもりだったけど実際は見れてなかったんだな。

お前たちが昔笑顔で語ってくれた夢を踏み潰そうとするなんて…すまなかった。

父さんはどんなことがあってもこの家族の大黒柱として支えていきたい」



普段は無口で何を考えているのかが分からないお父さんは実はわたしたちのことをずっと見守ってくれていたんだ。


お兄ちゃんの横顔を盗み見ると涙ぐんでいてわたしまでつられて堪えている涙がこぼれ落ちそうになる。



「…ほら、今度は母さんの番だよ。
一番にこの家族を大切に思っているのは母さんだろ?」



お父さんは…お母さんの本当に気持ちを知っているのかもしれない。
だから、穏やかな視線を送り涙を浮かべながら微笑む。


お母さんはしばらく口を開かなかったけど、一筋の涙がお母さんの頬を伝った瞬間、言葉を発した。