「お前の心ん中、絵の具の色の種類みたいにいろんな色にしてやる」



どこからでてきたのか、自信満々な笑みを浮かべてトンッと自分の胸を叩いた彼。


なんでなんだろう。


須藤くんとはさっき初めて話したばっかりなのにどうしてこんなに信用しちゃってるんだろ。


いきなり、キスしてくるような、そんな最低な人なのに。



もう、君会ったこの瞬間から既にわたしの世界は君に染まり始めてる…そんな気がした。



「…ほんとに?」


「ああ。お前がこの高校を卒業するまでにはいろんな色で溢れさせてやるから」



彼はお得意の眩しいほどの笑顔をわたしに向ける。


何を根拠にそんなことを言えるんだろう。
それを信じようとしているわたしもわたしだ。



でもね……



「その言葉…忘れないでよ」



少しでもわたしの世界が色づくのならば、その可能性を君に託したくなったんだ。


君なら、わたしを変えてくれるんじゃないか、って勝手な思い込みかもしれないかもだけど。



「はいよ」


ぽん、とわたしの頭の上に置かれた手。
そして、彼は優しく目を細めた。



────…ドキッ。


あれ…?

わたし、どうかしちゃってる?

不意に高鳴った鼓動に少し動揺しながら、必死に次の言葉を探す。



「き、キスしたことはまだ許さないから!」



考えて、考え抜いて出た言葉はなんとも不明な言葉だった。

別にもう怒ってないし、あれは事故だと思ってしまえばいいと思ってたから。


なのに、どうしてこんなこと言っちゃったんだろ。