「……もう無理に夢を追わなくてもいい。
ただ、これからずっと後悔して後ろを向いて歩くんじゃなくて前を向いて歩いて行け。」
前を…向いて歩く。
今までのわたしならきっとこんなことがあったらずっと悔やんでばかりで前なんて見ようとしていなかったはずだ。
でも、君の言葉にわたしは強く頷いた。
不思議と下がっていた視線が上がり、しっかりと先を見据えられて、しゃんと胸を張って前を向けるような気がしたんだ。
そして、まだ諦めたくなくて…最後に一度だけ君の力を借りずに自分の力で頑張ってみようと思った。
わたしの思いをちゃんと両親に全部ぶつけて、これから強くなるための第一歩を踏み出そう。
「…っ、要くん…ごめんなさい…酷いこと言って…」
いくら、取り乱していたからといって彼は何も悪くないのに酷いことを言ってしまった。
要くんだって、今を生きるのに必死なのに…家族のことを想うと胸が痛くて苦しいはずのに。
わたしのせいでまた君の表情を曇らせてしまった。
「俺のことは気にしないで」
こんなときまで優しくわたしに微笑んでくれる君。
こっぴどく怒鳴られてもおかしくないはずなのに…
そんな君に何も言葉を返せないでいると
「……ぶ」
「…え?」
ぼそり、と小さな声で君は呟いた。
それを聞き取れなくてもう一度尋ねると彼は今度は大きな声ではっきりと言った。
その思いがけない彼の言葉にわたしは目を見開いて驚いた。



