「いや…俺の方こそ答えられなくてごめんな」
彼がまたぎこちない笑みを浮かべる。
そのあと、少しの間沈黙が続きわたしたちの耳に届くのは応援しているよ、と言っているかのような風の音だけ。
「来年の今頃にはもう“高校生だから”っていう言い訳が通用しなくなって、あっという間に大人へとなっていくんだろうね」
先に沈黙を破ったのはわたしの方だった。
耐えられなくなったとかそういうんじゃなくてただこの言葉がするりと口から出てきただけのこと。
すると、彼は何も言わず黙って前に向けていた視線をこちらに移す。
「これから歳を重ねるたびにどんどん自由も失っていって今よりももっと、夢や希望…そんなキラキラとした言葉や感情たちが心の中から消えていってしまうのかな……?」
これは君の話を聞いていて、ふと頭に浮かんだ疑問だった。
大人にもなっていないわたしでも要くんに会うまではそうだった。
この薄汚れた世界に呑まれて、夢や希望なんて全く持てなくて毎日をつまらなく生きていた側の人間だった。



