初めて会った時、要くんの言葉が妙にスッと心に入ってきたのは彼がいろんな苦労をしてやっと今に辿り着いたからだったのかもしれない。
今も必死にもがき苦しみながら生きている。
わたしもそう、みんな一緒なんだ。
辛いのは自分だけじゃない、みんな何かしらの苦しみを抱えて、それでも今を生き抜くために必死でこの世界にしがみついている。
わたしが見放されないように親にしがみついているように。
「…うん」
「でも、選び直せたら俺はどうしたいんだろうなぁ…」
ぽつり、と吐き出された言葉は風に乗ってどこかへすぐ消えていってしまう。
でも、わたしは彼の言葉一つ一つを聞き逃さないように、消えてしまう前に全部心で受け止める。
「ごめんね、変なこと聞いちゃって」
もしかしたら、君もわたしと同じことを思ってくれているんじゃないか…って心のどこかでは期待してしまっていたんだ。
この恋が実るんじゃないかって馬鹿なことを思っていたんだよ。
いきなり、こんなこと聞いてすんなり答えられる人なんてそうそういないのにね。
少し考えれば、それぐらい分かったはずなのに。



