【完】幸せは透明度100%





「父さんも母さんも口癖のように『夢を見つけろ。そして、叶える努力をしろ』ってしつこいぐらいに言ってきてさ。

そんときはウザかったのに…今は俺が夢を叶える姿をそばで見て欲しかったってすげぇ思うんだよ」



要くんの寂しさや、やるせなさが痛いほど伝わってくるのにこんなときに彼を慰めるような上手い言葉が出てこない。


君がこの前、お母さんに『親がいる人が羨ましい』と言っていたのはそういうことだったんだね。



「姉ちゃんにも迷惑かけまくってる。
俺はどうしようもないぐらいの出来損ないだし…
こんな身なりだし…何回も姉ちゃんに頭下げさせちまった」



「お姉さんがいるの…?」



それは初耳だった。
本当にわたしは要くんのこと何一つ知らないのだ、と改めて思い知った。



「うん、10歳年上でつい最近結婚した。
姉ちゃんには我慢ばっかさせちまって…それなのに姉ちゃんは俺のこといつも応援してくれて…自分も辛いはずなのになのにな」



要くんの横顔がとてつもなく切なげで息ができないんじゃないかと思うほどぎゅっと胸が締め付けられて苦しい。


きっと、兄弟二人だけで今まで必死に生きてきてわたしなんかとは比べ物にはならないぐらいのたくさんの壁も乗り越えてきたんだろうな。