「驚きだろ?まさか泊まってるホテルが火事になるなんて思わないよな」



「ほんと……思ってないよな」悲しげにぽつりと呟いた要くんの瞳からは今にも悲しみの雫がこぼれ落ちそうだ。



「10年ぐらい前に父さんと母さんは二人の夢だったレストランを建てるための下見に行ってて、それでたまたまあのホテルに泊まったんだ。」



表情を酷く悲しげに歪ませながら話す彼はとても辛そうで…それを見ているこちらまでその時の心情が伝わってきて胸が苦しくなる。


要くんのお父さんとお母さんの夢……。
要くんの話を聞いているだけでドクンドクンと心臓が音を立てて、手に汗を握る。


どうして君がこんなに必死になってわたしを応援してくれてるのか、わかったような気がしたから。


夢を叶えられずに亡くなったご両親
それをきっと誰より悔やんでいるのは要くんだ。


わたしが夢を叶えようと努力もせずに諦めようとしたとき彼は優しくわたしに問い詰めたことがあった。


あれはこの世界の中で何らかの理由があって夢を叶えたくても叶えられない人もいるからなのかもしれない。


だから、チャンスのあるわたしの背中をずっと押し続けてくれてるんでしょ?