「……分かったよ。だから、頭をあげなさい」
今までずっと一言も話さずにわたしたちの話を黙って聞いてきたお父さんがそっと口を開いた。
その言葉につられるように要くんは頭をゆっくりとあげた。
「あなた…!」
「チャンスぐらい与えてやってもいいじゃないか」
「っ…じゃあ、このコンテストで入賞できなかったらすぐに諦めなさいよ」
お母さんの言葉にわたしは勢いよく頷いた。
チャンスをもらえた…これも全部要くんのおかげ。
「ありがとう…っ!お母さん、お父さん」
「ありがとうございます…!」
二人で顔を見合わせて微笑んだ。
嬉しくて、嬉しくて……本当に応募できるなんて思ってもなかったから。
すると、お兄ちゃんがさっきお母さんがゴミ箱に捨ててしまったコンテストの紙を拾い、広げてわたしに渡してくれた。
お兄ちゃんの表情はとても優しくて、まるで『頑張れ』と言っているかのよう。
やっぱり、お兄ちゃんは自慢だと改めて思った。



