「この世に無駄な時間なんてありません。
叶わないと分かっていても夢を追いかける時間も無駄じゃない。
それは今はわからなくてもきっといつか役に立つ。」
「あなたみたいな子供な学生に何がわかるの?」
「なんで……なんで娘のこと応援してやらねぇんだよ…!!
親が子供の夢を応援もしないで、潰してどうするんだよ…!」
ずっと、我慢していたのか要くんが声を荒らげた。
そんな様子にお母さんは少しだけ目を見開いていた。
「応援も何もあなたには関係ないわ。
才能があるならまだしも、叶う予知なんてないじゃない」
「夢は叶えるためだけにあるんじゃない。
その夢に辿り着くまでにどれだけ努力したかが大切なんですよ。
最初から諦めてたら何も出来ない。
無理だと分かってても挑戦したら無理じゃないかもしれない」
要くんの声はさっきの荒ぶっていた声とはまるで違い、怖いくらいに冷静で、そしてどこかやるせなさを感じた。
「俺は……ずっと親がいる人が羨ましかった」
ぽつり、と消え入りそうな声で呟いた彼の言葉にこの家にいる誰もが耳を傾けただろう。
「俺には父さんも母さんも、もう死んだから。
ちっちゃい時に夢の話をすれば、笑って『父さんたちは要の夢を応援するよ』って言ってくれた。
お二人もその気持ちになったことありますよね…?
その時の子供を想う気持ち忘れたんですか?」
要くんはゆっくりと問いかけるようにお母さんたちに言う。
初めて聞いた。
要くんのご両親が亡くなっていたことを。
わたしは要くんのこと何も知らない。
こんなにも一緒にいたのに…あたしは何も彼の力になれてない。



