「この前、夢は諦めるって言ってたじゃないの」
「でも、やっぱりわたしは…!」
「才能のないあなたには叶わないわよ。こんな夢」
「そ、そんな…っ!」
お母さんは呆れたようにフッと鼻で笑うと紙をグシャりと丸めてゴミ箱に投げ捨てた。
目の前が真っ白になった。
わたしの夢はどうしてこんなにも叶わないのだろう。
お母さんのたった一つの言動でボロボロに崩れていく夢。
手のひらにそっと乗せていた夢への想いも粉々になって空いた隙間からポロポロとこぼれ落ちていく。
わたしの夢や心はこんなにも儚くて、もろい。
「バカなこと言ってないで勉強しなさい。夢なんて見てる方が時間の無駄ってこの前も言ったっでしょ?」
はぁ……と重いため息をつきながらお母さんは立ち上がり、キッチンへと向かう。
何も分からない。
ただ、分かるのはもうわたしの夢は追うことができないってことだけ。
終わってしまったんだ……戦いは呆気なく終了。
「お母さん、それは違います」
え…?まさかのことに驚愕してしまう。
「何よ、偉そうに」
隣でこの状況を黙って見ていた要くんが口を開いたのだった。
彼の拳はぎゅっと力が入っているようで少し震えていた。



