視線を落とせば、目の前に思わず息を呑むほどの綺麗な須藤くんの顔がある。
だから、わざと視線を上にあげる。
でも、須藤くんはそれが気に食わなかったのかなんなのか、ぐっ、とわたしの後頭部を抑えて無理やり自分の方を向かせた。
必然的に絡み合う視線。
な、なに…?
このシュチュエーション。
「お前、案外綺麗な顔立ちなんだな」
そういって、ふわっ、と笑う須藤くんこそ綺麗な顔立ちだと思う。
切れ長なのに二重の目にすっ、と筋の通った鼻、丁度いいぐらいの薄さの健康的な色の唇。
嫌でもそんな顔が間近くにあると思うと、ドキドキしてしまう。
まったく、らしくない。
「しかも、髪も超サラサラで綺麗だし」
わたしの腰まであるフワフワと緩い天然パーマの黒髪を少しだけ手に取ってまるで愛おしいものを見ているかのような表情をして触る。
その顔はやけに色っぽくて、だんだん自分が自分じゃなくなってるんじゃないかって思う。
いつものわたしなら、こんなことなくて冷静に須藤くんの上から退いて、対処しているはずなのに今は何故か体が動かなくて無理だ。



