このスミレの花は頑張って、周りに負けないように踏ん張っているのに。
わたしと一緒なんかじゃない……この花の方がわたしなんかよりもずっと立派で強い。
「逃げ出したくなる時もある。でも、逃げ出すな。
逃げてばかりだと何も始まらないし変わらない。
自分を信じて進め、お前ならそれができるだろ」
重ねられていた手が退かされ、後ろを振り向くと彼がわたしの前に大きくて温かい救いの手を差し伸べてくれていた。
月明かりで照らされた彼はいつも以上にカッコよさが増していて、はちみつ色の髪の毛も照らされているところだけ、明るくなっている。
わたしはその差し伸べられた手を迷うことなく握って、立ち上がった。
もう、わたしは逃げない……強くなるんだ、この花のように。
そんな決意も込めて。



