歩くこと十五分。
彼がわたしを連れてきたかった場所は少しだけ小高い丘で周りはたくさんのコスモスらしき花が植えられていて、緑の丘を色とりどりに飾っていた。
「すごいね……ここ…」
この街にこんな綺麗な場所があったなんて、知らなかった。
そうか……わたしは小さな頃は見えていたものも大きくになるにつれて、この街が世界が嫌いになり、小さな幸せや何気ない景色を見ようとしていなかったからだ。
そして、一際目立っていたのは一輪の紫のスミレの花。
どうして……?
今は開花の時期じゃないはずだよ?
しかも、なんで一輪だけ?
わたしは無意識のうちにそのスミレ花に近づき、そっと花びらに手を置いていた。



