帰りの電車は割と少なくて、椅子に座ることが出来た。
でも、だんだんと駅を通るごとにポツポツと空いていた席も埋まっていく。


あと二駅というときに杖のついたおばあさんが乗ってきて、変わらなきゃ…!と反射的に思って立とうとした瞬間


隣に座っていた要くんが立ち上がり、おばあさんの肩をトントンッと軽く叩いて



「立ちっぱは辛いでしょ?
だから、座っておばあちゃん」



無邪気な笑顔をおばあさんに向けて、おばあさんに席を譲った。
おばあさんは心の底から嬉しそうな顔で微笑み、「ありがとね」といい、わたしの隣に座った。


やっぱり、君は優しいよ。
自分もたくさん歩いて疲れているはずなのに……

そう思うと、何だか申し訳なくなってわたしも立ち上がって彼の隣に立ち、つり革を握った。



「純恋は座ってていいよ」



わたしはその言葉にフルフルと首を横に振った。
わたしだけ座ってるなんてそんなことはできないよ。