どうしても好きなの

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受験まであと少しというところまで来たある日、いつものように1人で昇降口まで下りると、下駄箱に寄りかかっている人影が見えた。


「翔平、くん…?」


「お、未来
遅いね なんかやってたの?」


「うん、委員会で教室の掃除を…
翔平くんは誰か待ってるの?」


「まあ…そんな感じ?」


「そ、なんだ…」



それって花梨ちゃん?なんて聞くわけないけど、そうだったら嫌だなあ…って、私って嫌な奴だよね…



靴を履いて、翔平くんにじゃあねって言おうとしたら、私が靴を履き終わったのと同時に翔平くんが歩き出して、


「行こ」


「っへ?」


私?


「あれ、もしかして先約いた?」


「ううん、そういうわけじゃないんだけど…
待ってた人は?」


「いーのいーの
ほら帰ろ」



何が何だかよくわからないけど、翔平くんと一緒に帰れるの…?


嬉しい…っ


夢じゃないよね?


それからいろんな話をした。


受験嫌だね、とか、
好きな歌手の話とか、
翔平くんの弟が面白いって話とか。



そして帰り道も残り半分くらいになった頃、


「あれ…そういえば私何も考えずに自分の家に向かってるけど、翔平くんちもこの辺なの?」


「あー、おれんちはあっちらへん」



そう言って翔平くんが指さしたのは、私たちが今歩いてきた道。


つまり、学校を出たところから翔平くんの家は私の家とは逆方向だったんだ。



「え…!?
そ、そんな、じゃあ翔平くんあっち行かないと…」


「んーん、いーのいーの
おれんち帰り遅くなっても何も言われねーし。

それに帰り喋るの付き合ってくれたから、そのお礼。
もう遅いから女の子1人で帰らすのもやだしね。」


「…っありがとう…」


翔平くん…優しいなあ…


再び歩き出して、他愛ない会話が再開する。