高校3年になった春。
僕は一目惚れというものが本当にあるのだと知った。
僕は今日、初日から遅刻しそうだった。
かなり余裕を持って家を出たはずが、道路のわきで綺麗に咲いている桜に見とれてのんびりしていたらしい。
ふと腕時計をみると、あと5分でいつも乗っている電車が発車する時間だった。
そこからだと駅まで15分はかかる。
僕はこれまでにないくらい全力で走り、なんとかその電車に乗ることができた。
学校の最寄り駅に着き、電車を降りる。
ホームの階段を上っていると、不意に声をかけられた。
だが、周りにはたくさんの人がいる。
僕ではないな、と思い、そのまま歩き続ける。