「な………」



「遼じゃなくて、悪かったな……」



相手は捺夜だった。



「捺夜……」



「なんだよ、って……」




―――――ポタッ



僕の目から、涙が一気に溢れだした。



捺夜だ………。



捺夜だぁっ……。




僕は、捺夜に涙をいっぱいいっぱい浮かべたまま抱き着いた。



「ちょ!!?翔夜?!」



「うわぁ〜〜ん!!!怖かったよぉ!!!!」




僕は足を浮かせて、全体重を捺夜に預けた。



捺夜は腕の中で泣き崩れる僕の背中を黙って、優しく撫でてくれた。




「お前、なんであんなところにいたんだよ」



「だって……ヒック…ヒック」



「わかったわかった、後でゆっくり聞いてやるから、まずは泣き止め」



捺夜の温かい手が僕の背中をポンポンと優しく叩く。



僕は、足を床につけて捺夜と体を少し離し、ジャージの裾でゴシゴシと乱暴に涙を拭きあげた。



「部屋に、入ってね?疲れたから寝ようとしたら……カタって物音がして」



「部屋にいるのが怖くなった………ってわけか」



捺夜の言葉にコクンと頷く。