「.....どもっ」


明るくのん気にかけられた声に私はビクっと体を硬直させる。


「あっれ~、警戒してんの?」


あたりまえじゃん。


声の主に苛立ちを憶えて、私は相手を見上げる。


「こんなとこで独りは確かに危険だなぁ」


のこのこ応じた私がバカでしたっ。

私は無言でガバッと立ち上がるとその場を立ち去ろうとした。

危険ではないけれど、この人は何をするか分からないアブナイ人だ。


「待ってよ、こないだのこと謝りたいんだ」


背中に投げかけられた声に不覚にも足を止めてしまった。


「綾乃ちゃんは話しが分かる子だなぁ」


「さっ、座って」とばかりに肩をつかまれ、そのまま強い力で芝生の上に座らされてしまった。


「ここではさすがの僕も悪いことは出来ないから」


....ですね。

中庭というからには四方を校舎で囲まれているわけで。

生徒や先生の目に容易につくはず。

私が誘いに応じたのもその点だったことを忘れていた。